便秘が悪化する?使いすぎると危険な便秘薬について【薬剤師が解説】

便秘が悪化する?使いすぎると危険な便秘薬について【薬剤師が解説】

こんにちは、薬剤師のきゃんです。
今回は便秘が悪化してしまう危険な便秘薬について解説します。

便秘に悩む女性
便秘に悩む女性

漢方薬とか健康茶なら安全だと思って毎日飲んでるけど、最近効かなくなってきました・・・

きゃん
きゃん

その飲み続けているものが、便秘を悪化させる原因かもしれません。

腸を刺激する刺激性の便秘薬や、その成分が入った健康食品を使い続けると、大腸の便を排泄するための働きが弱まるため、便秘が悪化します。

慢性便秘症の患者さんを快便に導いてきた薬剤師が、便秘を悪化させる可能性のある刺激性の便秘薬見分け方と、その安全な使い方について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること

  • 刺激性の便秘薬の危険性
  • 刺激性の便秘薬の種類と見分け方
  • 刺激性の便秘薬の安全な使い方

便秘薬が便秘を悪化させる?

考える女性

「便秘薬が原因で便秘が悪化する」というお話しをすると、患者さんは口を揃えてこう言います。

便秘に悩む女性
便秘に悩む女性

まさか、便秘薬で便秘が悪化するなんて・・・

誤解しないでいただきたいのは、便秘を悪化させるのは刺激性の便秘薬であり、全ての便秘薬が便秘を悪化させるわけではないことです。

刺激性の便秘薬の危険性

刺激性の便秘薬とは、その名の通り小腸や大腸を刺激して、便を排泄するための働きをよくする薬です。腸を無理やり動かすので速効性はありますが、副作用として腹痛下痢吐き気をおこすことがあります。
子宮の収縮を誘発することで、流早産の危険性があるため、妊婦さんには使用しないことが望ましいです。

刺激性の便秘薬を使い続けると、無理やり動かされ続けた腸がへこたれて、便を排泄するための働きが弱まるため、「飲んでも効かない」状態になっていきます。効かないからと薬を増量すると、さらに腸の働きが弱まって効きにくくなり、やがて便秘薬を飲まないと排便できない便秘薬依存症につながります。

便秘を自覚して刺激性の便秘薬を使用する人のうち、6割以上がドラッグストアで購入されているという報告があります。市販の刺激性の便秘薬は医師や薬剤師の説明なしで購入できるため、危険な使い方をして便秘を悪化させてしまうことがあります。

刺激性の便秘薬で便秘が悪化するしくみ

そもそも便秘とは、量的にも質的にも生理的な排便が障害されて ”本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態” と定義されており、大きく2つの状態に分けられます。

  • おなかの張りや腹痛を伴ったり十分な量を排便できない状態
  • 排便困難感や肛門のつまり感などを伴う快適に排便できない状態

刺激性の便秘薬を使い続けて大腸の便を排泄するための働きが弱まると、便が大腸内を通過する時間が長くなり、便の水分が多く吸収されて、便が硬くなることで、快適に排便できない状態になります。
排便の回数や排便の量が減るため、お腹が張って苦しくなります。

チェックポイント

刺激性の便秘薬を使い続けると、大腸の便を排泄する働きが弱まり便秘が悪化します。医師や薬剤師の説明なしで手に入れやすいため注意が必要です。

刺激性の便秘薬の種類

錠剤

ここまで、刺激性の便秘薬が便秘を悪化させる危険性について解説してきました。”便秘薬”と呼んでいますが、医薬品だけでなく、サプリメントや健康食品にも刺激性の便秘薬の有効成分は潜んでいます

便秘に悩む女性
便秘に悩む女性

危険性があるのはわかったけど、どれが刺激性の便秘薬なのかわからない・・・

きゃん
きゃん

刺激性の便秘薬の種類ごとに解説しましょう。

アントラキノン系

アントラキノン系は市販の便秘薬のみならず、健康食品減肥茶にも含まれており、知らないうちに摂取する可能性のある成分です。

”武田漢方便秘薬”や、”ナイシトール®85A”にはダイオウ、”コーラック®ハーブ”にはセンノシドとして、名前を変えて潜んでいます。
「ダイエットに効く」と話題になった漢方薬、”防風通聖散”にもダイオウが含まれています。

アントラキノン
タデ科ダイオウ、ユリ科アロエ、マメ科センナなどに含まれる成分です。腸内細菌によってレインアンスロンに分解されて、効果を示します。

カスカラキャンドルブッシュ健康茶として知られていますが、これらにもアントラキノン類が含まれており、長期連用による大腸メラノーシスの危険性があります。

キャンドルブッシュを含む健康茶-下剤成分(センノシド)を含むため過剰摂取に注意-

独立行政法人国民生活センター(法人番号4021005002918)
きゃん
きゃん

漢方やハーブティー、健康食品だからといって安全とは言えないため注意が必要です。

大腸メラノーシス

本来ピンク色の大腸の粘膜が黒っぽくなってしまう状態を、大腸メラノーシスと呼びます。
刺激性の便秘薬の中でも、アントラキノン系の刺激性の便秘薬を長期に使い続けることでおこります。

ジフェノール系

ジフェノール系のピコスルファートナトリウム水和物は、医療用医薬品だけでなく市販の便秘薬としてもあります。

薬局やドラッグストア、ネットで購入できるものでは、”ピコラックス”や、”ビオフェルミン便秘薬”に含まれています。
刺激性の便秘薬の中では比較的ゆるやかに作用します。

ジフェノール(ピコスルファートナトリウム水和物)
そのままでは作用せずに、胃や小腸を通過して大腸に到達した後、腸内細菌由来の酵素によってジフェノール体に分解されて、効果を示します。

ジフェニルメタン系

ジフェニルメタン系のビサコジルは、医療用医薬品としては坐剤のみですが、市販の便秘薬としては飲み薬もあります。

薬局やドラッグストア、ネットで購入できるものでは、”ビューラックA”や、”コーラックⅡ”、”カイベールC”などに含まれています。

ジフェニルメタン(ビサコジル)
結腸・直腸粘膜の副交感神経末端への作用や、腸粘膜への直接作用によって効果を示します。

チェックポイント

刺激性の便秘薬はアントラキノン系、ジフェノール系、ジフェニルメタン系の3種類に分類されます。アントラキノン系は便秘薬だけでなく、健康食品にも含まれているため注意が必要です。

刺激性の便秘薬の見分け方と安全な使い方

錠剤

刺激性の便秘薬の危険性を中心に解説してきましたが、安全な使い方をすれば便秘が悪化する危険性は低いです。1回や2回の損傷では、大腸もへこたれないからです。

しかし、毎日のように、しかも長期間ずっと飲み続けるとどうでしょう。
刺激性の便秘薬によって損傷を受け続けた大腸は自然に便を排泄する働きが低下していきます。

きゃん
きゃん

そうならないために、刺激性の便秘薬を見分けて毎日飲み続けないことが大切です。

刺激性の便秘薬の見分け方

市販の医薬品は、同じ商品名でも入ってる成分が違う・・・なんてことがよくあります。

例えばコーラック(ビサコジル含有)や、コーラックハーブ(センノシド含有)、コーラックMg(酸化マグネシウム含有)などがあります。
同じコーラックでも刺激性の便秘薬もあれば非刺激性の便秘薬もある・・・なんてややこしいんでしょう。健康食品もいろんな名前があってややこしいですね。

便秘に悩む女性
便秘に悩む女性

じゃあ、どうしたらいいの?

きゃん
きゃん

気になる便秘薬や健康食品の成分表を確認しましょう。
刺激性の便秘薬の成分が含まれていたら、飲み方に注意が必要です。

刺激性の便秘薬の成分一覧

アントラキノン系
  • センナセンノシド
  • ダイオウ(大黄):センノシド
  • アロエ:アロイン
  • カスカラ
  • キャンドルブッシュ(ゴールデンキャンドル、ハネセンナ、カッシア・アラタ)

センナ、ダイオウ、アロエは、生薬または植物の名前で、センノシド、アロインは腸を刺激する作用をもつ有効成分の名前です。

ジフェノール系
  • ピコスルファートナトリウム水和物
ジフェニルメタン系
  • ビサコジル

チェックポイント

刺激性の便秘薬かどうか見分けるためには、成分表を確認しましょう。

刺激性の便秘薬の安全な使い方

先述したように、刺激性の便秘薬を使用しても、1回や2回の損傷では大腸はへこたれません。適切な量であれば損傷した大腸も回復できます

きゃん
きゃん

しかし、毎日使い続けたり、効かないからと大量に使用したりすると、大腸も回復できません。

そのため、刺激性の便秘薬は”とんぷく”としての使い方が推奨されています

例えば、熱が出たら解熱剤を飲みますが、平熱のときは毎日のように解熱剤を飲みませんよね?
刺激性の便秘薬も同じで、毎日のように飲む薬ではなく、お腹が張って苦しくなるなど便秘の症状が強くなったときに使用する薬です。

刺激性の便秘薬は、損傷した大腸が回復するための時間(2~3日程度)をあけて使用しましょう。
刺激性の便秘薬の効き目が悪くなってきた時は、大腸からのSOSです。
1週間以上、服用せずに大腸を休ませてあげましょう。これは刺激性の便秘薬と同じ成分を含む健康食品も同じです。

チェックポイント

刺激性の便秘薬を安全に使用するために、損傷した大腸が回復するための時間(2~3日程度)をあけるのが大切です。
効き目が悪くなってきた時は大腸からのSOS!大腸をしっかり休ませてあげましょう。

刺激性の便秘薬の作用時間

砂時計
便秘に悩む女性
便秘に悩む女性

朝飲んだのに・・・昼になっても効かないから、追加で飲んでもいいですか?

刺激性の便秘薬は腸にたどり着いてから働く薬です。
口から入れたものが大腸にたどり着くまでは個人差はありますが、効果が出るまでおよそ8~12時間程度が目安とされています。
夕食後や寝る前に飲んで、朝スッキリするくらいの時間ですね。
ビサコジル坐剤は肛門から入れるためもっと早くて、15~60分程度で効果を示します。

きゃん
きゃん

薬が効き始める前に、追加して飲ないよう気を付けましょう

まとめ

  • 刺激性の便秘薬を使い続けると、大腸の便を排泄する働きが弱まり、便秘が悪化します。
  • アントラキノン系の成分は便秘薬だけでなく、健康食品にも含まれているため注意が必要です。
  • 刺激性の便秘薬かどうかは、成分表を確認して見分けましょう。
  • 刺激性の便秘薬は、損傷した大腸が回復するための時間(2~3日程度)をあけて使用しましょう。
  • 効き目が悪くなってきた時は大腸からのSOS大腸をしっかり休ませてあげましょう。
きゃん
きゃん

刺激性の便秘薬の成分を見分け、安全に使用して便秘を悪化させないようにしましょう。