そもそも便秘とは?便秘のタイプ5選とおすすめ便秘解消法【薬剤師が解説】

そもそも便秘とは?便秘のタイプ5選とおすすめ便秘解消法【薬剤師が解説】
便秘に悩む女性
便秘に悩む女性

便秘が続いているけど、病院に行くほどでもないし・・・

きゃん
きゃん

便秘のタイプによっては、市販薬より消化器内科の受診がおすすめですよ!

便秘のタイプによって、同じ便秘薬を使ってもすっきり快便できるものもあれば、かえって便秘の不快感が強くなるものもあります。

慢性便秘症の患者さんを快便に導いてきた薬剤師が、排便のしくみや便秘の定義、知っておきたい便秘のタイプ5選おすすめの便秘解消法について解説します。

この記事でわかること

  • 排便のしくみと便秘の定義
  • 知っておきたい便秘のタイプ5選おすすめ便秘解消法

排便のしくみと便秘の定義

考える人

排便のしくみ

大腸
便ができるまで
食べ物は胃酸や膵液、胆汁酸によって消化されて栄養素となり、小腸で吸収されます。
胆汁酸の95%は小腸で再吸収され、残り5%は不溶性の食物繊維にくっついて大腸まで運ばれ、自然の便秘薬として働きます
ここに、腸内細菌が加わって、大腸の粘膜に水分を吸収されながら結腸まで運ばれて便になります。

こうしてできた便は、胃に食べ物が入ると反応して直腸に運ばれます。この反応によって直腸の筋肉がゆるんで便意を感じて排便します。

便秘の定義

便秘とは「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。

旅行や入院、転居など環境の変化に伴って発現する一過性の便秘であれば、ほとんど治療を必要としません。
ひどい腹痛や、腹部のでっぱり嘔吐などがあるときは、市販の薬では対応できないため、消化器内科の受診をおすすめします。

便秘の症状が徐々にはじまり、数ヶ月ないし数年間持続するものを慢性便秘といいます。
原因によって対応は異なり、食事や運動はもちろん、便秘薬を使ったり、時には手術を必要とすることもあります。

きゃん
きゃん

多くの方が悩む「便秘」は慢性便秘のことが多いです。

便秘の重症度

便秘のつらさは人それぞれですが、「めっちゃしんどい」「そうでもない」なんて曖昧な評価では、きちんと治療の経過をみていくのは難しいです。

それをなるべく客観的に評価するために、症状の重症度を評価する便秘スコア(CSS)や、便の形状を評価するためのブリストル便形状スケール(BSFS)が用いられます。

便秘スコア(CSS)

便秘スコア(CSS)は、以下の8項目を0~4段階、計30点で評価するスコアで、便秘の症状の重症度を評価するために用いられます。

01234
排便回数3回以上 /週2回 /週1回 /週1回未満 /週1回未満 /月
排便困難:便を出すのに苦痛を伴うなしまれにときどきたいていいつも
残便感なしまれにときどきたいていいつも
腹痛なしまれにときどきたいていいつも
排便に要する時間5分未満5~10分10~20分20~30分30分以上
排便の補助の有無なし下剤摘便or浣腸
トイレに行っても便が出なかった回数/24時間01~33~66~910回以上
排便障害の病悩期間(年)01~55~1010~2020年以上

まれに:1回/月未満、ときどき:1回/月以上だが1回/週未満、たいてい:1回/週以上だが1回/日未満、いつも:1回/日以上
機能性消化管障害(FGID):診断と治療の進歩/日本内科学会雑誌 第102巻 第1号・平成25年1月10日

ブリストル便形状スケール(BSFS)

ブリストル便形状スケールは、便の形状を1~7段階で評価するものです。大腸の通過時間が長いほどスコアは小さく(便は固く小さく)なるため、おおよその大腸の通過時間の目安になると言われています。
慢性便秘症の治療では、ブリストル便形状スケール4が目標とされます。

ブリストルスケールによる便の性状分類/排便ケア実践編/排便ケアナビ

便秘のタイプ5選とおすすめ便秘解消法

大腸
きゃん
きゃん

便秘のタイプはいろんな分け方がありますが、大きく次の5つがあります。

  • 器質性便秘(狭窄性)
  • 二次性便秘
  • 便秘型過敏性腸症候群
  • 排便回数減少型
  • 排便困難型

器質性便秘(狭窄性)

器質性便秘

器質性便秘とは、大腸の物理的な異変によっておこる便秘のことをいいます。

きゃん
きゃん

市販の薬では対応できないため、ひとまず内視鏡検査もできる消化器内科を受診しましょう。

二次性便秘

器質性便秘ではないものを機能性便秘といいます。
そのなかでも、何らかの疾患や薬の副作用が原因となるものを二次性便秘といいます。

症候性便秘

二次性便秘のなかでも、何らかの疾患が原因でおこるものを症候性便秘といいます。
便秘をおこす原因となる疾患には、神経疾患と代謝性の疾患があります。

神経疾患
脊髄病変、脳梗塞、パーキンソン病、多発性硬化症など
代謝性の疾患
糖尿病、高カルシウム血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症、甲状腺機能低下症、尿毒症など

症候性便秘の対処法

症候性便秘は、原因である疾患の治療が中心となります。
硬便の場合は便をやわらかくする非刺激性の便秘薬を補助的に使用しますが、他の薬との相互作用に注意が必要です。

きゃん
きゃん

便秘以外の治療のために毎日飲む薬がある場合は、医師または薬剤師に相談しましょう。

薬剤性便秘

二次性便秘のなかでも、薬の副作用が原因でおこるものを薬剤性便秘といいます。
便秘をおこす原因となる薬には次のようなものがあり、腸の運動を抑える副作用があります。

  • オピオイド鎮痛薬(モルヒネ・オキシコドンなど)
  • 抗コリン薬(ビペリデン・ソリフェナシンなど)
  • 抗てんかん薬(レベチラセタムなど)
  • 向精神薬(クロルプロマジンなど)
  • 抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)
  • カルシウム拮抗薬(アムロジピン・ニフェジピンなど)
  • 鎮けい薬(ブチルスコポラミンなど)

薬剤性便秘の対処法

副作用をおこしている薬によって対応が異なります。個人での判断は難しいため、お薬手帳などを持参して、まずは薬剤師に相談してください。

きゃん
きゃん

医師に相談すべきか、市販薬などで対応できるのかは原因となっている薬次第です。

便秘型過敏性腸症候群

二次性の便秘でないとき、まずは便秘型の過敏性腸症候群でないかを確認します。

きゃん
きゃん

これによって便秘を解消するための薬や食事方法が異なってくるので注意が必要です。

過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に異常が認められないにも関わらず、慢性的に腹部の不快感や腹痛がおこり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群です。

何らかの原因で腸の神経が過敏になっていることでおこると考えられていて、便秘による便通の異常を感じるものを便秘型過敏性腸症候群といいます。

おすすめ解消法

まずは、FODMAPを多く含む食品を避ける等の食事の見直しがおすすめです。
ビオフェルミンやビオスリー等の整腸剤の内服もおすすめですが、それでも効果がない時は医療用の医薬品がありますので消化器内科を受診しましょう。

排便回数減少型便秘

機能性便秘で二次性便秘でなく、腹部の不快感や腹痛を認めないもののうち、便が週3回未満、硬便(ブリストルスケール1~3)のものは排便回数減少型の便秘であり、次の2つに分けられます。

  1. 大腸の運動は正常だが、食欲低下やダイエットなどで食物繊維が不足していることが原因でおこるもの
  2. 大腸の運動が低下して、便の水分が多く吸収されることで便が硬くなることが原因でおこるもの

おすすめ便秘解消法

まずは、食物繊維の摂取量を増やすのがおすすめです。大腸の運動が正常であれば、これだけで便秘が改善します。
改善しない場合は、便をやわらかくする非刺激性の便秘薬を使いましょう。

便をやわらかくする市販の便秘薬には、スルーラック®Mgコーラック®Mg酸化マグネシウムE便秘薬などがあります。

排便困難型便秘

機能性便秘で二次性便秘でなく、腹部の不快感や腹痛を認めないもののうち、排便が困難で、残便感を認めるものは、排便困難型の便秘になります。

  1. 刺激性の便秘薬の使い過ぎで、大腸の運動や直腸の感覚が弱まっている
  2. 排便を我慢する習慣があって、直腸の感覚や排便するための筋肉が弱まっている
  3. 寝たきりなどで、大腸の運動や直腸の感覚、排便するための筋肉が弱まっている

おすすめ便秘解消法

まずは食物繊維の摂取量の増加や、便をやわらかくする便秘薬を使用してブリストルスケール4を目指します。
便がやわらかくなっても、排便が困難な場合は、市販薬では対応が難しいため、消化器内科を受診しましょう。
筋力をつけたり腸の動きを助けるために、適度な運動やマッサージもおすすめです。

きゃん
きゃん

医療用医薬品には、腸の運動を改善したり、直腸の感覚を改善するものがあります。

まとめ

  • 結腸まで運ばれた便は、胃に食べ物が入ると反応して直腸に運ばれます。
    この反応によって直腸の筋肉がゆるんで便意を感じて排便します。
  • 便秘とは「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
  • 便秘の重症度を便秘スコア(CSS)、便の形状をブリストル便形状スケール(BSFS)で評価します。
  • 器質性便秘・二次性便秘:市販薬での対応が難しいため、医師や薬剤師に相談しましょう。
  • 便秘型過敏性腸症候群:FODMAPを制限して、改善がなければ消化器内科を受診しましょう。
  • 排便回数減少型:食物繊維の摂取量を増やして、改善しない場合は便をやわらかくする非刺激性の便秘薬を使いましょう。
  • 排便困難型:便をやわらかくする便秘薬を使用して、便がやわらかくなっても排便が困難な場合は、消化器内科を受診しましょう。
きゃん
きゃん

自分でなんとかできる便秘とそうでない便秘を見極めましょう。